血液データの読み方 初級編②

こんにちは。今泉栄養療法クリニックです。
10月の第45回「ココロとからだセミナー」では 「血液データの読み方 初級編②」甲状腺、血糖、肝機能に関連するデータ をテーマに、分子栄養学的な視点から血液データを深読みする方法についてお話しました。

血液検査データの正しい読み方(初級編②)

~隠れた不調を見抜く「栄養療法的解析」とは?~
 健康診断の結果で「異常なし」と言われたのに、
  ・疲れやすい ・朝起きられない ・頭痛が多い ・なんとなく調子が悪い
 そんな経験はありませんか?
 実は、一般的な基準値(正常値)だけでは“本当の健康状態”はわからないことがあります。
 今回の記事では、当院セミナー「血液データの読み方 初級編②」
 血液検査データの読み方 初級編②  配布資料の内容から、
 肝機能・血糖値・甲状腺機能をテーマに、
 “隠れた不調”を読み解くポイントをやさしく解説します。

1.「基準値=健康」ではない理由

 ☑ 基準値は「検査会社の自称健康者の平均」

 検査会社の職員など、見かけ上「健康とされる人」の平均値。
 しかしその中には、・不摂生な生活 ・慢性的な疲労 ・ストレス過多
 の人も含まれています。つまり、基準値は“最低限の病気でないライン”に近い指標です。

2.栄養療法で見る「健康値」とは?

 ☑ 健康値=体が最適に働くための理想値

 ・生化学的根拠、 ・長年の臨床経験
   をもとに設定した“最も代謝がスムーズに働くライン”。

 さらに、数値単体ではなく複数項目の組み合わせや自覚症状から
 根本原因を深読みするのが特徴です。

3.肝機能の見方(AST / ALT / γ-GTP / コリンエステラーゼ)
  肝臓は
   ・栄養の代謝 ・解毒 ・胆汁生成 ・栄養の貯蔵
    など、生命維持に欠かせない「代謝の司令塔」

▼理想値の目安
  AST … 20  ALT … 20  γ-GTP … 15  コリンエステラーゼ … 280

▼ポイント
 ・AST、ALT、γ-GTPが高い → 脂肪肝、飲酒量過多、肝炎、薬剤性など
 ・コリンエステラーゼが高い → 脂肪肝を疑う
 ・コリンエステラーゼが低い → タンパク不足

▼代表的な症例
 症例①(50代女性)AST:27/ALT:32/コリンエステラーゼ:566
   → AST<ALTは脂肪肝の可能性が高い

 症例②(40代女性・飲酒量多いキッチンドランカー)禁酒後の改善例
   AST:500/ALT:1140/γ-GTP:139
    → 重度の肝機能障害レベル
   禁酒 2週間で急改善 → 生活(アルコール)の影響が非常に大きいことがわかる

4.血糖値の乱高下を読む(血糖値/HbA1c/中性脂肪/1・5AG/インスリン)
   ▼現代人が疲れやすいのは「血糖ジェットコースター」が原因?

   人類の歴史の大部分は“飢餓との闘い”。
   そのため私たちの体は、
   血糖を上げる仕組みはたくさんあるのに、下げる仕組みはインスリン一つだけ。
   さらに、砂糖や甘い果物など、急激に血糖値を上げる食べ物に囲まれている。
   その結果、ちょっとのインスリンの出遅れで
    ◆血糖が急上昇
     ↓
    ◆インスリンが過剰分泌
     ↓
    ◆反応性低血糖
    という乱高下が起きやすくなります

▼低血糖が起こす症状 : イライラ、不安、落ち込み、頭痛、手足の冷え、強い眠気
カフェイン・甘いものへの渇望

   特に、前頭葉がエネルギー不足になると
   ■ 判断力低下
   ■ 集中できない
   ■感情が不安定
     といった “心の不調” につながることも。

5.血糖を評価する検査項目の見方
▼血糖関連の“理想値”まとめ
   血糖値 … 90–100
   HbA1c … 5.0 (約1ヶ月の血糖値の平均を反映)
   グリコアルブミン … 14.5(約2週間の血糖値の平均を反映)
   1・5AG … 14以上(低いと食後高血糖がある)
   インスリン(空腹時) … 2〜3(高いとインスリン抵抗性を疑う)
   中性脂肪 … 100(低いのは低血糖を反映)

▼代表的な症例
  症例①(60代男性)
   血糖:112/Hba1c:6.4
   → 糖尿病レベル

  症例②(40代女性)
   血糖:89/HbA1c:4.3
   → 低血糖の時間帯が多い

  症例③(50代女性)
   中性脂肪:38(超低値)➡低血糖の時間が多い
   1・5AG:8.2(低値)➡食後高血糖を反映
   インスリン:6.4(高値)➡インスリン抵抗性
   → 血糖値の乱高下が大きい

6.甲状腺機能の見方 (TSH / FT3 / FT4 / LDL)
    甲状腺ホルモンは全身の代謝をコントロールするエンジン。

  低下すると、
   ・疲れやすい ・むくむ ・冷え ・体温低下 ・体重増加
   などが起きます。

 ▼理想値
   TSH … 1 FT3 … 3–4 FT4 … 1–1.5 LDL … 100

 症例①:甲状腺機能低下
   TSH:7.52(高値)
   FT3:2.82(やや低下)
   LDL:231(高値)

 症例②:甲状腺機能亢進
   TSH:0.005未満
   FT3:5.89(高値)
   LDL:71(低値)

 症例③:潜在的低下の可能性
   TSH:2.07
   FT3:2.53
   → 一見正常だが「低代謝傾向」を疑うデータ

7.まとめ:血液検査は“人生の健康地図”
  血液データは、ただの数値の羅列ではありません。
  あなたの生活習慣・ストレス・栄養状態・代謝のクセまでも映し出す“健康の地図”。

「健康診断はいつも異常なしなのに不調がある…」
そんな方こそ、血液データの“深読み”が役立ちます!

【次回予告】
  次回は 「ビタミン・ミネラル」「消化」「炎症」について解説します。
  お楽しみに!


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